2006年 01月 10日
ロンドン大学なんていらない |
いきなり挑戦的なタイトルですが、12月にロンドン大学のカレッジのひとつであるImperial Collegeがロンドン大学から離脱すると発表したことにより、一部の新聞でロンドン大学の存在価値について議論が巻き起こっています。
(写真はロンドン大学の事務局のあるSenate House)
以前から何度か書いていますが、ロンドン大学=University of Londonというのはロンドンにある20のカレッジによって構成される連合体です。連合体といってもカレッジ間の単位互換制度があるというわけではなく、おおむね独立して運営されており、普通の学生にとって関係があるところでいえば、図書館の相互利用制度があること(ただし完全に自由ではなく、いろいろ制限がある)と、最終学位がカレッジではなくUniversity of Londonの学位となること、くらいです。少し強引に言えば、実際には大学というより日本でいうところの(財)大学コンソーシアム京都のようなものに近いのではないかと思います(大学コンソーシアム京都は、学位授与は各大学ごとですが、単位互換制度はあります。)
さて話がそれましたが、なぜImperial Collegeがロンドン大学を脱退したのかというと、「University of Londonに所属するメリットがないから」。実に分かりやすいです。さらに詳しく言うと、1)University of Londonという組織の下で他のレベルの低い大学と一緒にされるのはもうイヤだ 2)Imperial Collegeのブランド力でも十分グローバルに勝負できる(以上、Imperial CollegeのSykes学長談)ということだそうです。また、ロンドン大学から脱退することによって、Imperial Collegeは計80万ポンド(1億6000万円)も節約できるそうです。Imperial Collegeの理事会の認可を経て、2007年までに脱退は完了し、University of Londonのカレッジ数が19に減ることはほぼ確実のようです。
では他のカレッジの動向はどうでしょう。The Guardianによると各カレッジは大きく見解が分かれているようです。規模が比較的大きく有名なカレッジ(UCL、LSE、King's等)はどちらかというとUniversity of Londonに対しては冷めていて、各自での学位授与も検討中。小さなカレッジほどUniversity of Londonの存続を希望しているところが多いようです。
実は、各カレッジのUniversity of Londonとの関係は、各カレッジのホームページに行けば何となく分かります。UCLやLSEのホームページにはUniversity of Londonの表記は一切見当たりません。一方でGoldsmithsやRoyal Holloway、Birkbeckなどはカレッジ名とUniversity of Londonの表記がそのまま一体化したロゴを使っています。私が所属するKing's Collegeは一応ホームページに表記がありますが、どちらかというと字は小さめ。中道路線というところでしょうか。他のカレッジもそんな感じのところが多いようです。
では結局University of Londonというのは必要なのでしょうか。英国内では各カレッジはそれぞれ別個の大学としてみなされているので、そもそもUniversity of Londonに所属しているということについて意識する局面が余りありません。大学のランキングなどでも、「LSE」や「King's College」などと書いてあって、いちいちUniversity of Londonなどとは書いてありません。そういう意味ではあまり英国の学生にとっては必要ないのかもしれません。
もっとも、これは英国での話。日本から来ている学生(特に帰国後に日本で就職活動をする方)にとっては何だかんだ言っても結局のところ「ロンドン大学」という名前が重要なのではないかと思います。いくらLSEやImperial Collegeが有名といっても、日本での知名度はまだまだ。しかも、いずれもUniversityという単語が入っていないので、知らない人からすれば大学かどうかもよく分かりません。「インペリアル・カレッジ大学」というのも妙な気がします。したがって、大半の方がいずれにしろ「ロンドン大学○○」と履歴書に書くことになるのではないかと思います。
ということで、日本人にとってはいまのところ「ロンドン大学は必要!」ということになるのではないでしょうか。
by snb03277
| 2006-01-10 06:41
| その他ロンドン大学